天井の青
20年も前のことです。
曽野綾子の小説「天井の青」を読んでいた。その小説に関してはさておき、そこに出てくる「天井の青」という朝顔に惹かれて、一体どんな朝顔なんだろう、どういう空色なんだろう、私も種を蒔いてみたいな、そう思っていた。

ある日、ホームセンターで見かけた「天井の青」という西洋朝顔の苗。洋名では「ヘブンリー・ブルー」というらしい。素敵な名前・・・。
その春越したばかりの一軒家は、オンボロだけど、庭がある。そこに植えよう。


2003年春、夫が九州に転勤することになり、家族で話し合った結果、夫には単身赴任で行ってもらい、私と子供達でどこか借りて住むことになった。
思惑もそれぞれ。子供達はなんだか張りきって、上の子二人は家賃の一部を負担するといい、下の子はバイトするから小遣いはいいよ、と言う。みんなが通える場所に、少々家賃は高いけど、井の頭線沿線に住まいを借りたのです。

その年、拓郎は「月夜のカヌー」を出したばかり。
電車を降りて坂道をゆっくり登って行くと、角に花屋さんがあり、その脇を通る度に♪花の店は坂の途中~なんて口ずさんでいました。
坂を上り切った辺りに、小さな川がチョロチョロ流れていて、玉川上水の支流だそうで、そこをエイっと飛び越えると、○○区でなく、三鷹市になってしまうのですけどね。


夫と離れて身軽になった私はオフ会じゃない、MLじゃないと夢中になり、やがて発表になったツアーのチケット獲得、日程、交通、宿泊・・みんなで情報を交換し、予定を立てるのも楽しかった。
「月夜のカヌー」のCDには、ツアーチケット申し込みの葉書も同封されていたような。

え?拓郎が?まさか!延期?
ショックではあったけど、ツアーに備えての健康診断で病気が見つかり、初期で手術が出来たことは、ある意味ラッキーだったのかもしれないし、誰かが言っていたように、みんながいたから、みんなで待てた。
術後、拓郎はせっせとメッセージをくれ、ツアーの延期も、むしろ楽しみを先まで伸ばしてくれたようにも思えて。
ファンみんなと拓郎が一体となったような、濃密な時間でもありました。


植えた朝顔の苗は、ぐんぐん伸びて、庭木を覆いつくすほどまでも。
けど、咲かない。
その年は冷夏だったでしょうか。そのせいかと思っていました。

2003年10月19日。
いい天気!
外に出ると、あれっ!綺麗な空色の花が咲いていました。
咲いたんだ・・・拓郎のツアー開始を待っていたかのように。この日に。


西洋朝顔は秋に咲くのだと知らなかったんですね。冷夏のせいじゃなかった。
うれしくて、うれしくて、さすが拓ちゃん。花も咲かせる(^▽^

東京フォーラムの昼夜2公演。
私達、もしかしたら拓郎以上に緊張していたかもね。
未だに、なんてあの時、わーっと拓郎を拍手で迎えられなかったのか、わからない。
私は拓郎そのものを見ていなかった、聴いていなかった・・・今も後悔している。しょうもない私。

フォーラムの花屋さんで、紫色のバラの花を買った。
この日、各地から出てくるファンみんなのための大オフ会を計画、実行して下さった方に渡そうと。
会場の入口で、「その花は?出演者に渡せませんよ」と止められたけど、「いえ、友達に渡すんです。」と通してもらった。
その花屋さんは、もうないんですね。
幕間に缶ビールで乾杯した白い石はずっとあるけれど。


あれから毎年のように、「天井の青」を植えたけれど、あの年のようには咲かない。
咲いても、なんだか普通の朝顔・・・
「天井の青」にも、いろいろあるんですね。「本物」でなく、青い朝顔だからと、ただそう名乗っているもの、早い時期に咲くものも。
去年も一昨年もサボっていたけれど、今年を意を決して(笑)説明をよく読み、10月頃咲くというのも確かめて。
ところが、あの猛暑です。蔓を伸ばし、大きく育ってくれたけれど、すぐに葉が黄色くなって、これじゃダメだわ・・・
咲くどころか、花芽の気配もない。
諦めて、片付けようと思ったものの、涼しくなったら、もしかして・・・せめて10/19まで待とうと、しぶとく植えていたのです。


あれから20年。
拓郎が引退などしているなんて。
あの頃、どんな拓郎の77歳を思い描いていたんだろうか。
同じままでいるわけないのに、ずっと「そのまま」だと思い込んでいた、というか、それしか思い浮かばなかった。
目の前の拓郎そのままの姿しか。

ずっと前のラジオ、「CLUB26」で、80歳になっても女風呂をのぞく好々爺の話をしていた。
拓郎、好々爺になるんじゃなかったの?
「引退」がどういうものかもわからず、ただ、時折、ふっと拓郎がなんらかのメッセージを送ってくれたら、と思うことある。

拓郎、元気ですか?元気でいてくれていますか?


朝顔は咲かないけど、いつの間にか、庭の金木犀真っ盛り。
大きくなり過ぎたので切ろうと思いながらも、巣を作ったのか、鳥の鳴き声はするし、夏、木陰を作ってくれるのも助かるし、で
結局そのまま。今年こそ、なんとかしなきゃ。


さすがにボサボサ過ぎる。
2023.10.19 08:21 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 拓郎 | com.gif コメント (0)

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