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福岡と熊本に行く

半年以上も前から、今は九州に住む娘に、11月の留守番を頼まれていた。なんてない、夫婦でコンサートに行くから、子供たちをお願い、というだけの話。
お安い御用。今回は、ついでにちょっと、足を伸ばしてみようかな。息子にもらった旅行券の余りが少しある、それで温泉にでも泊まろう・・・

この話を、町内会の集まりで口にしたら、予想外の反応が返ってきた。そんなことで親を呼ぶの?そういう時の交通費は出してもらえるの?・・・しまった!私は、あの中では、普通じゃいないこと忘れてた!T_T

私には夫と二人で行く拓郎のコンサートが、何よりの楽しみだった。その時だけは、昔の二人に戻れる。好きだった頃の二人がいる。
拓郎に会えるのがうれしいのか、久しぶりの二人の時がうれしいのか・・・
だから、娘が二人でコンサートに行くというと、応援したくなる。

知っている人、頼れる人のいない土地に来て、3人の子供を育て、家事をする大変さ、私なりにわかっているつもりだもの。たまには、留守の心配なく、安心して出かけたいよね。
それに・・・私を呼んだのは、たぶん、娘の優しさ。「来て」と頼まれれば、大手を振って出てこられる。孫に会える。呼ぶのも親切、そう思ってくれたのでしょう。
ついでに、ちょっと旅行しようと思って・・・「あら!いいね」 当然、娘はそう言ってくれる。一泊の予定が二泊になろうと、「こっちは間に合えばいいから、ゆっくりしてきて」
というわけで、「熊本にも行きます旅行」です。

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以前、知人から阿蘇の牧場の牛乳や、ヨーグルト、アイスクリームを頂いたことがある。写真で見た、あの広い広い阿蘇の高原が浮かぶ。そういう写真では、必ず、放牧された牛や馬がいるんだよね。
美味しいのは勿論だけど、その土地に思いが飛ぶ新鮮な味わいって、何なのだろう・・・。いつか、ソフトクリームを食べに行こう。のんびりと緑の牧草地で、青い空を眺めながら、格別だというソフトクリーム食べるんだ。
牧場の名前のついた牛乳瓶を洗って、カルトナージュで使う筆や刷毛差しにした・・・

思いがけず、娘一家が転勤で九州に住む事になる。
あの家は、転勤先を楽しむ一家なので、さっそく黒川温泉に行ったり、電車好きの3才の男の子を汽車に乗せに行ったり。熊本までは近いのだそう。
熊本行きが現実味を帯びてきた。春休みと夏休み、娘達が帰省する合間の、気候が良い頃・・・飛行機、宿泊、行きたい場所のピックアップ。
詳しい友人にいろいろ教えてもらう。熊本って、案外深いんだ・・・どうやって、どこから行こう。
計画するのは楽しいね。若い時、私は旅行嫌いで通っていたのにな。
そろそろ具体的に、と思い始めた頃、あの地震が起こった。

その時の衝撃をどう表現したらいいのだろう。
お城が壊れる。デパートの壁が崩れる。阿蘇の馬や牛は、行きたかった牧場は、行くつもりにしていた白川水源は・・・
熊本を愛している人の、愛する熊本の光景が崩れる・・・
私には、大変ですね、とか、一日も早い復興を、なんて言えなかった。義援金を、熊本の物産を買って応援しよう・・そういうこともしなかった。

夫は「いわき」の出身だ。
私にとって、あの震災は大きな出来事でなく、目の前の片付けなければならない一つの「点」だった。
自分勝手かも知れない。亡くなった人、身内を亡くした人、行方不明の人々、大変な被害に遭っている人もいるというのに、私は、目の前の「点」に疲れ、イライラした。夫、義妹、しばらく家で預かることになった義母・・・私には、それが、あの震災の全てだ。
了見狭いよね。優しくないよね。災害は、その人自身のものだなんて、冷たいね、私。
でも、例えば、誰が、今もあの茨城の水害を覚えているでしょう。3年前の広島の土砂災害を忘れないでいるでしょう。自分のこととして引き受け続けられる人は、滅多にいない。

熊本の時も、私は黙った。何もしないのに、「お見舞い申し上げます」なんて書けるわけないじゃん。
ひとまず、旅行の計画は消した。
行くなら、震災関係なく行こうと思った。災害地にお金を落としに行こう?落とす、って何よ。復興割り、復興の一助になるる、そいうのは、私に合わない。

今回、孫の子守に便乗して熊本に行く。


温泉はどこに泊まろう・・・
あちこち探して見たけれど、有名な温泉どころは、この時期、一人宿泊は難しい。
そりゃ、予算がたっぷりあれば、どこだって泊まれるけれど、こちらにも都合というものがある^^;
それに、車の運転をしない私には、行ける場所も限られてくる。行けるとしても、どうやって戻ればいいのか、お手あげの場所もある。

阿蘇にしようか、天草にしようか・・・。初めての熊本なら、まず、阿蘇でしょう。
空き瓶を「筆立て」にしていた、あの牛乳の牧場には行けそうもないけれど。
空港からバスで行ける温泉を選び、まずは予約。飛行機のチケットも早くになるべく安く。ネットで「車がなくても行ける阿蘇」というのを読んで、大雑把な予定を立てる。
あっちもこっちもとは考えない。ただ、温泉につかり、部屋で本でも読んで、飽きたら、また温泉に入り、夕食も、外に美味しい店があったとして、歩いていけるかどうかもわからない。一人で夕方外に出て、迷子にでもなったら目も当てられない。普通の旅館の夕飯でいい。ポツポツ食べて、また温泉・・・そんな時間の過ごし方もいいでしょう?年なのでしょうか。ぼーっと温泉にでも入りに行きたい、なんて思うようになったのは。

あちこち観光は欲張らない。一箇所だけ、阿蘇を感じられるところに行ければいい。バスの運行が始まっている「草千里ヶ浜」に決めた。
この前、テレビで石川さゆりさんが、草千里で歌っていたんだ。どこまでも広い草原。池というのか水溜まりというのか、水がキラキラ光っていた。今回の地震で、阿蘇は大変な被害を受けたというけれど、こんなところまで行けるようになっている。
綺麗なだなぁ・・・歌を聴くどころでなく、ずっと景色に見とれていた。・・・動機が単純T_T

次の日、熊本市内へ行くには、やっぱ限られた本数のバスに頼るしかない。ネットであちこち見ていると、うっかり古い資料なのに気がつかなくて、鉄道があると勘違いしてしまうんだよね。
なんだ、阿蘇駅から熊本駅まで豊肥本線の乗れば近いじゃん・・・そう思い込み、いざ調べてみると、豊肥本線は未だ全面復旧の目処は立っていない。昨年の地震の被害は甚大だった。不通区間はバスが代行運転してるけれど、運行時刻を見ても、あくまで生活の足。観光に使えるものではない。地震から一年半というのが、どういうことなのか、調べるたびに、自分の甘さを思い知らされる。

阿蘇のミルクを送ってくださった方に、メールを書いてみる。
「11月初めの阿蘇は、寒いですか?」

その方は、九州の人ではないのに、なぜか熊本大好きで、とっても詳しい。
「寒いですか?」と聞いたとき、私は、それ以上のことを期待していたのかも^^;
お返事を下さり、行程表まで作っ下さった。お勧めの場所や、アドバイスまで添えて。
なるほど、なるほど、こんなふうに行けば、「熊本旅行」になるんだ。
ただ行けばいいや、と思っていたけれど、もう一度調べ直し、組み直す。
市内には泊まらず、夕飯にちょっと飲んだら、遅くなってもその日のうちに娘の所に行こうと思っていた。
そっか、もう一泊すれば、市内の観光だけでなく、阿蘇の滞在も充実したものになるんだ。


うーっ、空港から各方面に行くバスの時刻表が10/1から変更になる。最初調べた時には、飛行機が到着して、15分くらい後に阿蘇方面行のバスがある、しめしめ、と思っていたのになぁ。
何も到着予定の4分前にバスが出なくったって・・・。そりゃ、JALもANAもある。到着も出発もある。私のためのバスではないのだけど。変更の出来ない航空券だし。
仕方ない。空港で一時間過ごすのも悪くないかも。ただ、それだと、予定していた草千里に行くバスに間に合わず、阿蘇駅で、また一時間以上待たなきゃならない。タクシーの利用は考えない。
もともと、車の運転をしない私の阿蘇観光だもの、今はまだバスの本数も少ないのを承知で「行こう」と決めたこと。
ただ、晴れますように。

10月に入ってから、天候不順もいいところ。かつての体育の日、10月10日は、晴れの特異日で、だから東京オリンピックの開催日に決まった、と聞いていたのが、嘘のよう。雨が降り続き、寒くて、薄いダウンまで引っ張り出したかと思うと、Tシャツ一枚で過ごせる陽気になったり。
梅雨とは違う冷たい雨の日が続くと、気持ちまで暗くなる。憂鬱になってくる。お天気の性格形成に与える影響なんて研究もありそうだけど、なんて馬鹿なことを考えながら過ごしていた。
これだけ降り続いたのだから、私が行く頃には晴れるでしょ、という期待も。そう、11月3日も晴れの特異日だった。娘の所に行く3日はどっちっでもいいのだけど^^; 
肝心なのは、1日と2日。観光地の10日間予想、というサイトを毎日見ていた。時間毎の気温、降水確率がわかる。今は便利だね。


【11/1】 快晴だ!
飛行機、私はいつも左の窓際を取る。空キラキラ。眼下に、山並みも町並みもくっきりと広がり、あれは何の川だろう、あの山は?富士山見えるかな、と思っているうち、山なみが途切れ、大きな街になる。機長のアナウンス「只今名古屋上空・・」なんだ、もう名古屋なんだ。
高度の関係もあるのでしょうか。黒、茶色、ベージュ、パッチワークのような田んぼまで、しっかりわかります。海に島々が浮かんでいるのは、もう九州?どこだろう。長崎のような気もするけれど、飛行機がどこから入ってゆくのか・・・知識のない私がいけないのだけれど、現在地やあたりの地図が、ぱっと解説付きの映像でわかるようなサービスがあったらいいのにな。音楽やテレビばかりでないよ、機内で楽しみたい物。
今時、空からの眺めに見入るおばさんも、珍しいのかもしれないけどね。夫は、席は通路側を取っていた。人が前を通ることもなく、降りる時はさっと出られるから。
普通の移動手段、サラリーマンなら九州など日帰りコースだものね。

阿蘇くまもと空港、定時に到着する。
もしや、バスが遅れて・・・ひとまずバス停まで行ってみたけど、そんな都合のいいことは起きなかったでしたT_T

デッキで飛行機を眺める。ぽかぽかと暖かい。子供連れのお父さん。車椅子に(たぶん)お母さんを乗せた女性。穏やかな光景が広がっていた。
売店でお土産見て、冷やかしに試食して、コーヒーショップで簡単なお昼。なんだかんだで、もうすぐ時間。早めにバス停のベンチに座る。
静かだなぁ・・・空広いなぁ・・・あったかいなぁ・・・座っているだけで、私は旅行に来たのだと、楽しく幸せな気持ちになる。

朝は4時半起きだったし、飛行機の中では外を眺めるのに夢中だった。バスの中で少し寝ようと思ったけれど、周りの景色がどんなものだか気になって眠れない。
紅葉のシーズンだけれど、紅葉するような木は、あまりない。高い高い常緑樹の間をバスは走る。どこかで山に生える木のことを読んだっけ・・・忘れましたT_T
特別に変わった景色があるというのでない。だけども、ここが熊本・阿蘇なんだ。高知や鳥取とも違う。市の中心部に入っていくバスでないから、空港で感じた空気のままだ。赤水という駅を2度通るのは、どうして?ホテルやペンション村にも止まる。カトリード・ミニオン?どこかで聞いたことがあるような。(あとで聞いたら、娘たちは行ったことがあるそうな。「パンくんがいた所だよ」だって)

阿蘇駅に到着したら、赤い電車が止まっていた。
なんだかうれしくなって、写真を撮ろうと近づいたら、先客が数人、カメラやスマホを手にしていた。それを見て、またうれしくなる。何がうれしかったんだか。
阿蘇駅は、木造の、これぞ駅、という感じの駅だ。
まずは、バス停を確かめる。バス案内所&待合室があり、各方面への路線図や時刻表、料金などが貼ってある。職員さんも数人。
これなら間違うことなく乗れそう。ホッとしてベンチに座り、あたりを眺める。牛の像がある小さな公園、噴水が、間欠泉のように吹き出す公園・・・あれ?「道の駅」の看板が見える。道の駅って、高速道路などにあるのじゃなかったっけ?ここじゃ、ほんとの「駅」だもの。

近くまで行ってみたら、ほんとに「道の駅」だった。地元の野菜や特産物が並び、観光客というより地元らしき人で賑わっている。小さく不揃いなトマトの袋詰め、水菜・・・わ!この水菜、茎が紫色だ!買って帰りたかったけど、無理じゃん。
お弁当やおにぎり、お惣菜なども並び、奥の広い座敷では、家族連れ、友達、様々なグループで、今買ったのでしょう。お弁当やおやつを広げている。座敷の向こうには、大きな窓があり、駅のホームが見える。そのまた向こうには、山が見える。空がある。ここでお昼でも良かったな・・・。

外に出ると、ソフトクリーム売り場に人が並んでいた。牛乳そのままの味と、コクのあるものと、ヨーグルト風味のと、それぞれ牧場の名前が書いてある。どれにしますか?少々迷って、牧場名で(気分で)真ん中のを選んだ。
外のテーブルで、ポカポカの日差しの下、食べる大きなソフトクリーム、美味しかった!

駅舎の中に入ってみよう。今は降りる人も乗る人もないひっそりとした駅舎。入っても大丈夫かな・・・そっと戸を開ける。
さっきの赤い電車はどこから来て、どこに行ったのだろう。時刻表のまばらな数字を追う。二つ書いてあるだけの赤い数字は、特急。普通列車は、黒い数字で4つ。一日4本だけなんだ。全て下りのみ。
さっきのは、12:57発の大分方面らしい。あの赤い電車で、旅行気分を味わおうと、ひと駅、ふた駅乗ったみたとして、ここに戻れたのかどうか。

そろそろバス停で待っていよう・・・、と、外人さんがひゅーっと自転車でやって来た。ん?何者?
阿蘇火口線のバスに、その人も乗るらしい。運転手さんに、自転車を積んでくれ、と言っている。自転車ぁ?
バスの乗客は、私とその外人さんだけだ。運転手さんが、カタコトの英語で、どこから来たのか尋ねると、「カナダ」。北海道から新潟、あちこちを旅しているらしい。
えっ!帰りは、あの自転車で下りてくるの?運転手さん、曰く。「漕がなくったって、だーっと下りてこれるさ」

緩やかな登山道。健脚なら、登れてしまうかしら?15キロと、バスのアナウンスが行っていた。

運転手さんは、とても親切で、ちょっとお喋り。私が東京から来たというと、ガイドさんに早変わり^^通る道、見えるもの、一つ一つ説明してくれる。
ススキがきれい!わ!牛がいる、馬がいる!放牧されている!見るもの見るもの、感動している私に笑う。

「あの山も、山肌が割れて、黒くなってるでしょ。あれは、地震で割れたんです。」
工事している。よく見ると、道路に亀裂の跡なのか、黒い線があちこち走っている。黒い土嚢が積まれた場所では、「このあたり並んでいた家は、みんな崩れて、無くなったのよ。」家があったんですか?・・・
「昭和天皇がいらしたとき、案内役の説明に、「あ、そぅ」とお答えになったとか。私は笑うけど、外人さんにはわかったのかどうか^^
私が明日は阿蘇神社に行くというと、「それはいい!」「あの神社は格式高く、その辺の神社と違うのよ。」・・・(説明が始まる)・・・「行ったら、水飲んできなさい」「近くの金物屋に行って、ポリ缶を買い、水を詰めて宅配便で送るといいよ」(いくらの水につくのよ、ね)
「都会の若者が金出して水を買うのがわからない」「うちじゃ、近所の5軒と、ボーリング入れたんだ。もう40年、水道代払ったことないよ。最初は金かかったけどね。おかげで使い放題。冬はあったかく、夏は冷たい。うちじゃ、夏は、水クーラー」
水クーラー?贅沢ですねぇ・・・運転手さん、うれしそう。

30分足らずの道のり。二人であんまり盛り上がるものだから、日本語は少しだけわかるという外人さんは、おいてけぼり。m(_ _)m
帰りのバス停も、あそこだよ、と指差して教えてくれた。バスはこれ一本でしょ。帰りまで30分しかなくて、乗り遅れたらどうしよう。「そしたら、その辺の馬拾って、駆け下りて来ればいいさ。」馬泥棒するの?・・・
到着して、向こうを見渡す。

わーっ。
ほんとに、ほんとに、素晴らしかった。写真を撮ったって、私のスマホには収まりきれない。青々とした草原なら写真映えしたかもしれないけど、今は、枯れて茶色。でも、その茶色が、いろんな茶色でね、チョコレート色だったり、ココア色だったり、プリンみたいに黄色かったり。私には、それがとっても綺麗だった。
山はくっきりと高く、草原は、どこまでも広く、あっちも歩きたい、向こうにも行ってみたい。子供だったら、ワーワー走り回るだろう。バァは、ただ少し歩いては立ち止まり、あたりを眺め、また違う所を歩き始め、立ち止まり、空を見上げ、山を見る・・・来てよかった、ここだけで十分と、満足している。こんなにお天気に恵まれるってこと、あるんだろうか。水がキラキラ光ってる。そっちまで行ってみたいな。時間があるかしら?
一人でウロウロしている私に、二人組のおじさんが、写真撮りましょうか?いえ、景色だけで。私はいいですので。笑って向こうに行った。

バスの出発まで、あとちょっとある。もう一度ソフトクリーム食べちゃおう。阿蘇駅で食べなかった方の牧場のだ。あっちを食べておいて正解でした。
バス停に向かう途中、さっきバスで一緒だった外人さんと出会う。火口西口まで行って、自転車で降りてきたところみたい。見た?草原を指差す。
「今、見るところ。素晴らしいね」 ふ・ふん、褒められてうれしい。私の物じゃないけどさ。

すでにバス停には人が並んでいる。外人さんばかりだ。日本人は、多分、車なのでしょう。お天気は、曇ってきて、ひんやりし始めている。やっぱ山の天気は変わりやすいんだ。
バスが来た。混んでいる。さっきの運転手さんに、そっと頭を下げる。「間に合いましたよ」のつもり。

もっといたかったなぁ。調子に乗って、乗馬にも挑戦してみたかった。(かも)。並んだ馬さん達、コロンとして、とっても乗りやすそうだったもの。
タクシー使えば、早く来られたのに。でも、時間無駄でも、バスで来て良かった。短い時間しかいられなくても、ぎゅーっと詰まった私の草千里。
バスを待つ間に見た阿蘇駅の光景。思ったこと、感じたこと。バスの道中、あんなに楽しい会話ってある?贅沢だった、貸切バスのような、私のための時間。

阿蘇駅から温泉まで、またバスに乗る。ホテルに迎えに来てもらおうかとも思ったけど、バスもいいものだと思ったから。
乗客は、また私一人だ。今度の運転手さんも、いろいろ話をしてくれる。阿蘇火口線も、今は一台のバスで三往復してるけど、もう少しすれば、台数も増えるとのこと。
冬はバスないでしょう、と言ったら、いや、ありますよ。大きい方のバスにチェーン巻いて運行するのだそう。一面真っ白な草千里ヶ浜も綺麗でしょうね。でも、少しでもお天気悪いと視界が遮られ、何も見えなくなる。この前来た外人さん夫婦が、霧で何も見えなかったとぼやいていましたよ。私、運が良かったんですね。遠くまでよく見えましたよ。

「そこで降りるんなら、泊まるのは、あっちか、こっちですね。」あっちです。「向こうに建物見えるでしょう。そこですから」
お礼を言って歩き始める私。と、「お客さん、反対です!」わざわざバスから降りて呼び止め、教えてくれた。あ!信号渡るのか・・・何聞いてんだか、の私T_T
なんて親切なの。二人のバスの運転手さん、ありがとう。これを書きながら、「真夜中のタクシー」を思い浮かべてしまっていたのでした。


ホテルという名の大きな旅館に着いた。
まずは屋上露天風呂。陽の落ちる前に、と思ったけど、こっちは、日の出日の入り、関東に比べて遅いんだよね。
まだ明るい。誰もない。確かに阿蘇五岳は見えるけど、眺めながらのんびりお湯につかる、というわけにはいかない。だって、お風呂に体を沈めると、景色が隠れて、空だけになってしまうんだものT_T 誰もいないのをいいことに、立ったり座ったりていた^^;思ったより、お湯熱くない。
女湯の方に行ってみよう。
入り口で女性が話しかけてくる。エレベータのドアが乗り切る前に閉まって、友達とはぐれてしまったのだそう。向こうのお風呂にいませんでしたか?誰もいなかったですよ。おかしいわねぇ・・
あちこち動き回らず、エレベーターか部屋の前で待っていたほうがいいのに、と思ったけれど、私が言うのも余計なお世話。その女性は服を脱ぎ始め(え?お風呂入っちゃうの?)私に後ろのホックを外してくれという。「いつもは娘にやってもらうんだけど。」

今日は、老人会の集まりで市内から来たのだそう。いいですね、大勢で。私?私は一人。えー!一人?このシャワーのお湯、どうやったら止まるんだろ。自然に止まるみたいですよ。なんだかんだ、喋る。
そういえば、羽田でも、私と同じくらいの年の女性、いつもはだんなさんと一緒なんだけど、今回、同窓会で、初めて一人で帰省する。心細くて。じゃぁ、と一緒に歩き始め、搭乗まで、ずっ並んで座り、いろんな話をしたっけ。
バスの運転手さんも沢山話を聞かせてくれたし。
熊本の人が人懐こいのか、私がおしゃべりを呼ぶのか。

お湯、熱いですね。いいお湯・・・
お湯を見に来たホテルの女性は、41度、と言った。締め切っていると、湯気もいっぱいで室温高くなり、お湯も熱く感じ、露天風呂では、お湯も風で冷やされるのか、少しぬるく感じるのだそう。「同じ41度なんですけどね。」
逆だと思っていた。家では、冷えた体でお湯に入ると、熱いもの。
もうあがろうか、という頃、あー、○○さん!はぐれたと言っていた友達が来た。「勝手に先にお風呂に入って!」私だったら怒るところを、ニコニコと「いて良かったわぁ」。やっぱり熊本の人はいい人だ^^
私は、もう一度さっきの露天風呂に入ってこよ。空がうっすら赤い。「落陽」というわけには行かなかったな・・・
もう夕飯だ。広い食堂で、一人ぽそぽそ食べていると、なんだか、侘しくなってくる。
周りは、みんな二人連れ。さっきのおばさんたちは、団体なので部屋が別だ。あの「後ろのホック外して」と、見知らぬ私に頼んできたおばさんが、なんか恋しくなる。隣のテーブルにいたら、どうぞどうぞと、ビールなど勧めてくれちゃったりして。
一人でボーっとするのがいい、と決めた旅行だけれど・・・ビール、頼んじゃおう。

売店を覗く。買いたいものはない。ビジネスホテルのように、缶チューハイを自動販売機で売っているわけもなく。仕方ないので、明日の湧水のために、お茶を買った。ペットボトルがもう一つ欲しいから。
部屋に戻る。なんだか肌がスベスベするみたい^^ あ、ここには、もう一つ、大浴場というのがあったんだ。お風呂行ってこよう。
大浴場は、さすが大浴場。人も案外多い。ふと見ると、ガラス戸の向こうにもお風呂があるみたい。出てみると、露天風呂だぁ。風冷たい。お湯、気持ちいーい。
先客に、若い女性が一人。お邪魔しちゃったかな。
「月、綺麗ですね」「あ、ほんと!」いかにもの温泉会話。「でも、星見えないんですよ」・・・今時の女性って、こんなふうに絵に描いたような(?)会話するんだろうか。温泉宿だからねぇ・・・
岩に触ってみる。綺麗に洗ってあるような岩。苔むしたり、汚れた感じがない。あれは、どこの温泉だったろう。手を置いたら、ツルンと滑ってしまうようだったのは。
やっぱり外のお湯はぬるいのか、もう一度大浴場に入ろう。

ふーふー、湯あたりしちゃったかしら?母だったら、極楽、極楽、と言ったかしら?
部屋で、何をするということもない。ノートパソコンどころか、ipadも持ってこなかった。携帯(スマホ)は、私には、外の物だ。部屋から持ち出す必要のないものもある。PCでは書けても。携帯では書けないメールというのもある。
いろいろ教えて下さった「熊本好き」の方に、今日の報告をしようと思ったけれど、携帯だと、何か「割り込む」ような感じがして気が引ける。第一、報告しないと失礼なのか、いちいち報告したらうるさいのか、わからない。見えない人との付き合いは難しいね。

本を読み始めたら、眠ってしまった・・・ふと目が覚めて、テレビをつけたら、日本の有名人100というのをやっていた。安倍総理よりタレントさんの方が上なんだ。全ての年代で点を取らないと、上の順位には行けない。
どうせ、拓郎など候補にもあがってないんでしょ。一位は「タモリ」さん。
空調で暖かいのに、クシュン!クシャミが出る。乾燥するのか、喉がいがらっぽい。明日の朝風呂はやめたほうがいいかなぁ・・・持参の風邪クスリを飲んで寝ることにする。


ここまで書いて。
私、何回「ベンチに座る」と書いたんだろう。ほんとに、座ってばかりだったんだもの。
載せるような写真がない・・・草千里で「おじさん二人組」に撮って貰えばよかったかな。そしたら、あたりの景色が綺麗に入ったかもしれないもの。私にはモザイクかけて。